今回は、高卒ルーキーながら出場を続けるFW日髙元選手のインタビューをお届け。激動となった加入からの約5カ月間を振り返る内容を、周辺の証言とともにオフィシャルライターの戸塚啓さんに綴っていただきました。

「自分」よりも「チーム」
半年前は、知られざる逸材だった。
九州の強豪・神村学園高等部で、1年時から高校選手権に出場した。3年時には攻撃の中心となり、夏のインターハイ優勝に貢献して大会優秀選手に選出されている。高校サッカー関係者の間では知られていたものの、サッカー界全体の注目株ではなかった。冬の高校選手権を前にした時点で、プロ入りは内定していなかった。
最後のアピールの場となった選手権では、7ゴールを叩き出して得点王に輝いた。母校の初優勝の原動力となったそのプレーは、確かなインパクトを残した。1月12日の決勝戦から4日後の16日に、RB大宮アルディージャへの加入が発表されたのである。
ここからの日々は疾走感にあふれる。沖縄キャンプでチームに合流すると、2月8日の明治安田J2・J3百年構想リーグ開幕節でいきなりメンバーに名を連ねた。
「正直ビックリしたっていうのが一番でした。でも、メンバー入りしたことでの責任感というか、入った以上はプレーで見せなきゃいけない。覚悟を決めて出たらやってやろう、と考えていました」
高校選手権得点王の肩書は、すでに記憶のフォルダに格納していた。
「それはもう過去のことです。プロの世界に入ったのだから、ここで数字を残したい、という気持ちです」

翌節もメンバー入りし、第3節の福島戦で公式戦デビューを飾った。5-0の状況で、終盤に送り出された。
「試合の映像を見返したときに、ファン・サポーターの方が名前をすごく呼んでくれていたのに気づきました。ピッチに立ったときは何も聞こえないぐらいに集中していたというか、ホントに自分の世界に入っていた気がします」
大舞台でも緊張しないタイプだ。プロデビュー戦も「固さはなかったです」と話す。
ただ、いつもの自分とは少し違った。「ちょっと遠慮していた部分はあるかもしれないです」と、言い添える。
「ファーストプレーでスペースにボールを出してくれて、仕掛けられる場面がありました。自分は前を向いたらゴールへ向かっていける選手なので、まずはゴールを狙おうかなと思ったんですが……そこで、自分が、自分が、というふうになっちゃうと……チームの勝利はホントに大事だと思うので、『自分、自分になりすぎないように』と思いながらプレーしました」
それも、当然だったのかもしれない。
1カ月前までは仰ぎ見ていた舞台に、勝敗を背負うひとりとして立っているのだ。「自分」より「チーム」を優先しようとの意識が高まるのは、むしろ当然だっただろう。
ポテンシャルを呼び起こすために
第4節、第5節はメンバー入りするものの出場はなく、第6節の藤枝戦は追いかける展開で投入された。チームは第5節のいわき戦、藤枝戦と勝利を逃し、翌節の磐田戦で日髙はスタメンに抜てきされる。

「ついに来たかじゃないですけど、ここでやるしかないと思って。シュートが課題だったので、まずはゴールへ向かうことを考えてプレーしました」
チームは前半を2-0で折り返し、61分には3-0とする。その5分後、日髙はベンチへ下がる。この日も、シュートを記録することはできなかった。
「コーチ陣と振り返りのMTGをしたときに、シュートを打つかどうかはFWとしての評価につながる、という話があって。入らなくてもシュートを打つことが大事だと思うので」
自身が特徴とする背後への鋭い抜け出しを、シュートへ結びつけるために──日髙は個人練習に取り組んでいった。
「シュートへ持ち込むパターンを意識しているというか、背負いながら狙うとか、いろいろなバリエーションでのシュート練習をしています。いかにシュートへ持ち込むのか、ということを意識しています」
トレーニングをサポートしてくれるのは戸田光洋ヘッドコーチだ。アイディア豊富なそのトレーニングは、数多くのストライカーに覚醒のヒントを与えてきた。
「野球のピッチャーがいろいろな球種を操れるように、ストライカーもさまざまな状況に対応できるように。いまはそのベース作りをしています。基礎の基礎の段階と言いますか、さまざまな種類の練習をやっています。これまで多くの選手を見てきましたけれど、日高選手は飲み込みが早いですね。点を取ることについてのポテンシャルを秘めているので、それをいかに呼び起こすことができるか。人間的にも真っすぐないい男なので、やればやるほど身についているな、と感じます」
戸田コーチとの個別のトレーニングと並行して、日髙は自分以外のストライカーからも学びと刺激を得ている。伸びシロしかない18歳には、ピッチに立っていない時間もかけがえのないものだ。
「自分が初めてスタメンで試合に出たジュビロ戦で、誰かが傷んだタイミングでベンチへ水を飲みに行ったりすると、(杉本)健勇さんが『自分から少しポジションを変えて、もっとボールを受けに行ってもいいんだぞ』みたいな感じでアドバイスをしてくれました。普段の練習でも、ボールの受け方だったりを教えてくれます」
大宮には、ポストプレーをしながら高い技術を発揮する杉本、フィジカルバトルと背後への抜け出しに優れるオリオラ・サンデー、ゴール前でしたたかに仕事をする豊川雄太ら、さまざまなタイプのFWがいる。経験豊富な豊川からも、貴重なアドバイスを得ている。
「一緒にシュート練習をしたことがあるんですけど、『GKにおへそを見せないようにして、シュートを打ったらいいんじゃない』というアドバイスをもらいました。それもちょっと、意識しながらやってます」
GKにへそを見せないということは、「右にも左にも蹴ることのできる体の向きを作る」ことを意味する。つまりは、どちらを狙うのかをGKに悟らせないということだ。
J2・J3百年構想リーグでは、2列目の泉柊椰、山本桜大、カプリーニがゴールを量産している。彼らのプレーも格好の教材だ。
「カプさんも桜大くんも、そこまでサイズがある選手じゃないと思うので、自分と重ねられるところが多くあります。カプさんは競り合いに強くて被ファウル数が多い。柊椰くんと桜大くんはシュートがうまいですし、ボールを持った局面でのクオリティがすごく高い。学べるところはたくさんあります」
18歳の変化。そこにあるセンス
日々の学びが結果につながったのは、5月9日の第16節・札幌戦だ。オリオラ・サンデーのシュート性のクロスに、左足のワンタッチシュートで反応した。DFに当たって微妙にコースが変わったボールを、至近距離からしっかりとゴールへ蹴り込んだ。

プロ初ゴールを決めた試合直後には、「もちろんうれしさはあります」と喜びを表わした。しかし、3-4で敗れてしまったこともあり、「チームが負けてしまったのであまり喜べません」と話した。
数日後にあらためて初ゴールについて聞かれると、「やっと決められたな、って感じてます」と率直な思いを明かした。
「初ゴールで勢いに乗れるんじゃないかな、と自分自身思っていて、残り試合は少ないですけれど、その中で1点でも多く決められたらと思っています」
日々の練習で日髙と対峙するDFは、18歳の変化に気づく。村上陽介は「センスを感じます」と話す。
「アジリティとか一瞬のスピードが速くて、ゴール前の動き出しはすごくセンスがある。高卒1年目という言い方がふさわしいかどうかは分からないですけど、その立場でこれだけ試合に出て戦力になっている。初ゴールを取りましたけど、結果がついてくることでどんどんいい選手になっていくのでは」
日髙のシュートを受けるGKはどうだろう。プロ16年目の経験者・笠原昂史に聞く。
「チームに合流したばかりのころは、ボールにパワーを伝えきれていないのかな、という印象がありました。でも、ミツさん(戸田コーチ)とトレーニングをしていく中で、ボールにしっかりパワーを伝えて、いいシュートが枠に飛んでくるようになりました。同じフォームで左右に打ち分ける練習をしていて、しっかりコースへ打ち分けられるようになってきましたね」
日髙自身もプロ入り後の変化を感じ取っている。
「技術的にはすごく上がってきていると思いますし、やっぱり自信がついたというか、この位置で持ったらこう打つっていうイメージができているので、迷いなくゴールへ向かっていけると感じています。ゴール前でのクオリティは求められるので、自分もペナルティエリア内だけじゃなく、外からでもどんどん足を振って、それが入らなかったとしてもセカンドボールがあったりするので、まず足を振るっていうことを意識しています」
自らの特徴として、「守備での献身性」も挙げている。宮沢悠生監督はゲーゲンプレスを志向しており、日高は前線から二度追い、三度追いと足を止めずにボールをチェイスしている。
「高校でもそういうサッカーをしていたので、監督のサッカーは自分には合っていると思います。守備陣だけじゃなくて攻撃の選手も、守備しなきゃいけない場面はあります。前戦でボールを奪えたらゴールに近いですし、守備の人たちが楽になる。そこはチームのために、という気持ちでやっています」
ただひたすらに、ひたむきに
沖縄キャンプからここまで、ひたすらに、ひたむきに、駆け抜けてきた。「ここまで試合に絡めるとは、想像できなかったですね」と、率直な心境を吐露した。
「神村(学園)の先輩たちもプロで多くやっていて、1年目はすごく苦しんだと聞くことがありました。自分もそうなるかなと思っていたんですけど、大宮は若い選手が多くて、そういう選手たちも使ってくれるというか、出場時間を与えてもらえる。その中で若手がどんどん成長して、チームにエネルギーを与える、チームを底上げする。そうやってチーム内でいい競争ができたらな、と思います」
ロールモデルにしたい選手には、かねてから前田大然を挙げている。爆発的なスピードを武器に相手ゴールへ迫り、前線から守備のスイッチを入れて、ボールを奪い切ることもできる。最前線でもサイドでもプレーできる。FIFAワールドカップ北中米大会の日本代表に選ばれた前田のプレースタイルは、共通点が多い。
「前田選手は前線からのプレッシングがすごく速い。点も取れますし、いずれは自分もそういう選手になりたいと思います」
伸び盛りの才能は、ワンプレーをきっかけに成長の歩幅を拡げたりするものだ。だからこそ、日高から片時も眼を離すことはできない。ちょっとでも眼を離したらもう、この18歳ははるか先のレベルへ到達している。

戸塚 啓(とつか けい)
1991年から1998年までサッカー専門誌の編集部に所属し、同年途中よりフリーライターとして活動。2002年から大宮アルディージャのオフィシャルライターを務める。取材規制のあった2011年の北朝鮮戦などを除き、1990年4月から日本代表の国際Aマッチの取材を続けている。

