今回は、プロ2年目の長身MF中山昂大選手のインタビューをお届け。テーマは「なぜ強い覚悟を持って今季に臨んでいるのか」。プロデビュー前の苦労やプレーの変化をなぞりつつ、オフィシャルライターの平野貴也さんに綴っていただきました。

「ここで活躍しなければ意味がない」
勝負のときだ。期待の大型バランサーは、殻を破ろうとしている。187cmの長身と温和な表情、攻守にバランスの取れたプレー。大卒2年目のMF中山昂大は、少しずつプレータイムを増やしている。
RB大宮アルディージャになって2年目の今季、チームは大きく若返った。大卒組は、すでに中堅。将来性ではなく、現在の力量で評価されることになる。2026/27シーズンのJ2開幕に向け、生き残りをかけていると言っても過言ではない状況。「期限付き移籍でもっと試合に出るということも考えて、めちゃくちゃ悩んだ。でも、ここ(大宮)で活躍しなければ意味がないと思って、残ることに決めた」と覚悟を決め、闘志を燃やしている。
前任の長澤徹監督に評価されたのは、後方から攻撃役への配球だったが、宮沢悠生監督に評価されているのは、自身もボールも前進していく攻撃の展開力。見る人によって特徴が変わるのは、彼が歩んできたキャリアを象徴する部分だ。ドリブラーでも、パサーでもないが、どのプレーも高レベルで実践でき、周囲と連係できる。
小学生のころはFWだったが、U15からは、チームに大澤朋也、柴山昌也、須藤直輝ら明確な武器を持つアタッカーがそろい、ポジションはサイドハーフやSBなど流動的になった。
「『監督としては(どこでも起用できて)使いやすいよ』と言われていたけど、そのときは、イヤでした。ほかの選手の穴埋めをやっているんじゃないかとか思って」(中山)
焦る気持ちに拍車をかけたのが、急激な体の成長だった。中学2年になると、1年間で身長が15cmも伸びた。ひざに成長痛が出ただけでなく「こんなに動けなくなるんだ」と驚くほどに俊敏性が落ち、予測力を磨くなど頭で補った。動ける感覚が戻ってきたのが中学3年の後半。長身になり、CBでも起用されるようになった。
三度の大ケガを経て確立したスタイル
U18では、高校1年時に、国民体育大会の埼玉県の優勝に貢献。手ごたえをつかんでいた。しかし、2年生の秋、左ひざの前十字靭帯を損傷。全治8カ月の診断を受けた。そして、ようやく復帰した高校3年生の夏、悪夢が再び訪れた。
「ちょっと雨が降っていて。練習が終わる、ラストワンプレーで、同じ足を。自分で分かりました、同じだって。今でも、スローで、鮮明に覚えています。2回目が一番しんどかったです。治りかけて、これからという時期だったので」(中山)
結局、U18の後期は、ほとんどがリハビリ活動だった。しかし、その間、ひょろっと長く伸びた体にパワーをつけようと努力し、3年間で18kgほど増量するなど、いつか開花する日が来ることを信じてあきらめなかった。東洋大学に進学して1年生のうちに復帰したが、秋に3度目の負傷。空中戦の着地で、今度は右ひざの前十字靭帯断裂を負った。
度重なる負傷を乗り越え、ようやく安定してピッチに立てるようになったのは、大学2年の夏だった。中山は「やっと、という感じ。ほぼ丸3年、サッカーをやってないような感じでしたから。やっぱり、不安でした」と振り返ったが、主力として成長。チームにアクセントをつけるセントラルMFとして立場を確立させた。成長期に磨いた予測力、ケガの苦しみを乗り越えて得た落ち着き、体重を増やして強度を増した肉体。もともと持っていたボールフィーリングと戦術眼。すべてが、ようやくかみ合った。大学4年時、主将として全日本大学選手権の初優勝に貢献。実力を証明してみせた。
進路は、古巣一択で決めた。小学4年生でジュニアに入ってから、何度も現地で観戦してきたアルディージャのトップチームへの加入だ。
「タクくん(和田拓也)もそうだし、フロントにはトミくん(富山貴光)やキクさん(菊地光将)、(橋本)早十さんがいたり。自分が見ていた人たちと、一緒に試合を勝とうという中でサッカーをできるのが、すごい。また、自分のプレーを見たアカデミーの子たちが出てきて、そこまで自分が生き残って一緒にプレーできたら、そんなに良いことはない。そういう影響を与えていきたい」
口調は落ち着いていたが、長く描いてきた思いの蓄積を感じさせる言葉だった。
「もうちょっと『オレが、オレが』でいいのかな」
守備の強度など課題を磨いて臨んだプロ1年目の昨季、CBでの急な起用に応えられたのは、キャリアの賜物だった。「『監督としては使いやすいよ』と言われていたのが、やっとつながった」と万能性で重宝される一面を知った。中山は、一芸ではなくバランスに秀でたタイプだ。「自分が周りを知ったり、周りが自分を知ってくれたりして生きるタイプ」と自認している。しかし、この個性は結果につながらなければ評価されにくい。主軸に定着できていない状況は続いた。
チームは若返り、年齢的には中堅。プロ2年目をどう生きるか悩んだが「もともと、残る気持ちが強かったけど、また試合に出られなかったら…という不安もあった。引退を発表していた(濱田)水輝くんやトミくんに相談したら、どこを目指しているんだって(言われた)。みんなが、ここでできるよって言ってくれた。それに、どこに行っても競争はある。そこで覚悟が決まった感じはしました」と大宮での挑戦続行を選んだ。小学生のころから知るDF福井啓太は、期限付き移籍を選択。真剣に悩み、話した仲でもあり「この半期が重要という話をよくしていたし、アイツは覚悟を持って(外に)行った。(自分は)この半期にかける思いが人一倍ある」と、今季はキャンプから自分の特長を明確に打ち出すことを意識。中盤で生きるイメージを宮沢監督に持ってもらうことはできた。
強い覚悟が、少しずつ「控えめな大型バランサー」から「存在感抜群の大型中心選手」への脱皮を促進している。
「オレが入ってチームが逆転したとかではなく、オレがパスを出して点が入った、オレが点を取るとか。もうちょっと『オレが、オレが』でいいのかなと。結果が欲しい。そこに尽きます」
長く夢見てきたのは、大宮でプレーすることだけではない。活躍し、後輩やファン・サポーターにエネルギーを与える姿を体現しなければ完結できない。
「やっぱり(ファン・サポーターに)楽しんでもらいたい。自分だけじゃなく、見ている人が楽しかった、いい試合だったと思って帰ってくれるようにプレーしたいです」
若返るチームの中に居場所を確立するために、描いてきた夢への距離を縮めるために、中山は、百年構想リーグに強い思いで臨んでいる。

平野 貴也(ひらの たかや)
大学卒業後、スポーツナビで編集者として勤務した後、2008年よりフリーで活動。育成年代のサッカーを中心に、さまざまな競技の取材を精力的に行う。2009年からクラブのオフィシャルライターを務めている。

