ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回は、最終ラインを統率し開幕3連勝に貢献した、新加入の西尾隆矢のすごみについて、「プレー面」、「内面」の両方に焦点を当て、オフィシャルライターの戸塚啓さんに記事を執筆いただきました。

【ライターコラム「春夏秋橙」】粕川 哲男
その存在感はまるで“古参”。西尾隆矢が3試合で見せつけた心身両面のクオリティ
早かった“高い位置まで出て奪うスタイル”への順応
これ以上ないスタートを切っている。
新加入の西尾隆矢だ。
J1リーグで100試合以上に出場してきた実力者である。プロ2年目の2021年に日本代表に選出され(当該試合は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止)、2024年にはパリ五輪に出場した。J1でもポジションを確保できるクオリティの持ち主だから、この24歳の開幕スタメンも、3試合連続出場も、決して驚きではない。
それにしても、である。最終ライン中央で発揮する存在感は、もう何年も大宮でプレーしているかのようだ。ネイビーを基調としたファーストユニフォームも、見事なぐらい似合っている。
「移籍は初めてなので、最初は不安もありましたし、分からないことだらけでした。でも、チーム全体がすごく歓迎してくれて、ホントに入りやすい雰囲気を作ってくれました。チームメートとスタッフに、ホントに感謝です」
練習から良く通る声が響く。緊張感のある場面でも、リラックスしたシーンでも、コミュニケーションの輪にその姿を見つけることができる。
「新加入ですけれど、サッカーでは遠慮したらダメですし、若い選手が多い中で僕から言えることもあるので、積極的にコミュニケーションを取りながらやっています」
戦術的なフィット感も、試合を重ねるごとに高まっている。チームはボールを失ったあとの即時奪回を徹底しており、CBも相手のFWに食いついて高い位置まで出ていく。「これだけ高い位置からボールを奪いにいくのは、なかなかなかったです」と話すが、その表情に戸惑いはない。充実感が浮かぶ。
「CBが積極的に縦ズレ、横ズレして、(前線から)落ちた相手に積極的にアタックしていくのは言われていることで、そこは僕らも意志疎通ができています。後ろからのコーチングがあるから思い切っていけますし、いい守備からいい攻撃へつながっていると思います」

“全員”に“全部”伝える。組織的な戦いを支えるその共有力
ここまでホーム3連戦で、3連勝を飾った。開幕節は2-1、第2節は3-2で勝点3をつかみ、第3節の福島ユナイテッドFC戦はクリーンシートを達成する。6-0で勝利した。
「大量得点をしている中で、ちょっと気が緩んで失点してしまうというのはよくあると思うんですけれど、チーム全体で『今日はクリーンシートで終わらせる』と話していたし、(村上)陽介とも話していました。個人としてもチームとしても、目標を達成できたのは次につながっていくかなと思います」

最終ライン中央でコンビを組む村上はもちろん、同サイドでプレーするイヨハ理ヘンリーとも、チャレンジ&カバーの関係はスムーズだ。自身と同じ新加入のオーストラリア人GKトム・グローバーとも、意思の疎通がとれている。
「僕は思っていることも全部伝えていますし、トムにも分かりやすいように言っているつもりです。最終ラインの4人だけでなくトムも含めて、すごくいいコミュニケーションが取れています。練習から細かいところまでお互いに指示しているので、それが試合での連係につながっているのかな。もちろん、スタメンの選手だけじゃなく、ディフェンスグループ全員で疑問があったところは共有しますし、チームとして共有できているからこそ、誰が出てもいいサッカーができると思う。それは宮沢(悠生)監督もずっと話していることで、誰が出てもクオリティが下がらないというところは、僕たちの武器にしたい。そういったところは、日頃から心がけています」
「すばらしい」スタジアムの熱を背に
第3節の福島戦では、ガブリエウが控えメンバーに名を連ねた。2年連続キャプテンの頼れるブラジル人CBが、昨年7月以来のメンバー入りを果たした。
「彼とはまだほとんど一緒にやっていないんですけど、練習を見ているとプレーがどんどん良くなっているのが分かります。一緒にやるのが楽しみですし、競争がより激しくなります。そこはもう、チーメートでありながらライバルでもあるので、お互いを刺激し合っていく。それがチームの底上げにもつながる。全員で競争をしていかないといけないですね」
前所属のセレッソ大阪はJ1リーグで戦っていたこともあり、これまでNACK5スタジアム大宮のピッチに立ったことがなかった。後半アディショナルタイムの逆転弾で勝利した第2節の試合後に、私たちの聖地について聞いた。
「いやあ、めちゃめちゃすごいですね」と、西尾は切り出した。言葉が自然に弾んでいく。
「やっぱりサッカー専用スタジアムというところで、ファン・サポーターのみなさんとの距離も近いです。僕が以前所属していたセレッソのスタジアムも距離は近いんですけど、あそことはまた違う雰囲気ですばらしい。今日のこの逆転劇も、僕たちだけじゃできなかった。ファン・サポーターのみなさんの力のおかげで勝ち取れた勝点3だと思う。そこはホントに感謝しないといけない、っていうのはすごく思います」
福島戦の最終盤の局面で、相手FWとボールの間にグッと体をねじり入れ、マイボールにして攻撃の芽を摘んだ。力強く、たくましく、闘志満々で、それでいてクリーンに。西尾のプレーはチームメートを鼓舞し、スタジアムに熱を呼び込む。

戸塚 啓(とつか けい)
1991年から1998年までサッカー専門誌の編集部に所属し、同年途中よりフリーライターとして活動。2002年から大宮アルディージャのオフィシャルライターを務める。取材規制のあった2011年の北朝鮮戦などを除き、1990年4月から日本代表の国際Aマッチの取材を続けている。

