ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。2026年のチームはどんな歩みを進めているのか。開幕して3試合を戦ったチームの注目点や選手に関して、長年クラブを取材しているオフィシャルライターの粕川哲男さんに記事を執筆いただきました。

【ライターコラム「春夏秋橙」】粕川 哲男
既存選手も新加入組も。それぞれの言動から見る開幕3試合の充実度
“RBOA”の目標の下、ポジティブに歩む選手たち
RB大宮アルディージャを率いる宮沢悠生監督は今季、チーム名の頭文字にちなんだ4つの目標を掲げている。
R=Respect(敬意を持つ)
B=Be Champion(チャンピオンになる)
O=Open Mind(広い心で受け入れる)
A=Achieve(成し遂げる)
約4カ月間の明治安田J2・J3百年構想リーグにおいて、自分たちのスタイルを確立しようとしているチーム、新陳代謝を図りつつ勇敢なチャレンジを続けようとしているチームにふわさしい目標だと感じる。なお、宮沢監督は「チャンピオンになる」だけにとどまらず、「チャンピオンであり続ける」ことを求めている。

選手たちは、それらの目標を体現しようと尽力している。そして実際、体現している姿を見る機会が多い。既存の選手、新加入選手、新人選手、ケガからの復帰を目指す選手、誰もがポジティブな姿勢で日々のトレーニングに向き合っているのだ。チーム始動日からリーグ 戦で3連勝を飾ったここまで、練習場でもスタジアムでも、サッカースタイルや方向性に対するネガティブな発言は、誰からも、一度も耳にしたことがない。
今季開幕前、「これまではずっと自分のクオリティを上げることに集中してきましたが、年齢も上のほうになって、より結果を意識しています。今季は得点やアシストなど結果を大事していきたい」と口にしていた泉柊椰は、第3節の福島ユナイテッドFC戦で自慢のドリブルから今季初得点を決めた。試合後には「雰囲気が良く、厳しいことも言い合える関係でやれています」とチームの現状を語り、「昨季からの積み上げもあるので、攻守で手ごたえや成長を感じながらプレーできています」と、自身の充実ぶりにも言及した。
名古屋グランパスから期限付き移籍中の加藤玄は、現在3戦連続で先発出場中。ピッチ中央で小島幹敏や山本桜大と絶妙な関係を築き、ワンランク上のプレーを披露している。攻守両面で主導権を握りにいくスタイルに心を開いて、自分のものとするために主体的に取り組み、「目指しているところは絶対に間違っていない」と断言。快勝した福島戦後は「前から積極的にボールを奪いに行く以上、外される瞬間は間違いなくあります。ただ、それを恐れて下がっているようではボールを奪うことはできないし、それはわれわれの目指すフットボールじゃない」と胸を張った。
セレッソ大阪から完全移籍で加入した西尾隆矢は、開幕から3試合連続でフル出場中。最終ラインの中央で村上陽介とコンビを組み、第3節の福島戦では積極性と堅実性を兼ね備えた守備で今季初のクリーンシートを支えた。相手FWに食らいついて最前線まで出て行く攻撃的な守備について「なかなかやったことはない」と言いつつも、「本来は後ろが気になって止まったりするような場面でも、周りからの声があったので行けました。試合を重ねるごとに意志疎通を図れるようになっています」と、成長を実感している。

“全員”が明るく取り組む日々
自分たちが取り組んでいること、チームスタイルへの信頼は厚い。それは、チャンスをつかんでプレーしている選手に限った話ではない。現段階で試合に絡めていない選手たちも表情は明るく、日頃の練習に手ごたえを感じている。
横河武蔵野FCへの育成型期限付き移籍より復帰した若林学歩は、今季がプロ5年目。西大宮のグラウンドで、新加入のトム・グローバー、最年長の笠原昂史、3シーズンぶりのリーグ戦出場を目指す志村滉と奮闘中。ポジション争いはし烈で、越えるべき壁は高い。それでも悲観することなく、前向きに歩みを進めている。
「(GKの中で)4番手という序列に対する悔しさがありますし、3人に劣っている自分自身に対する悔しさもあります。それでも練習はすごく充実しているんです。すばらしい選手3人の良いところを盗んでいければ最強になれると思っていますし、(市原)吏音のように大宮から海外に行く夢もあきらめてないので、少しずつでも課題をクリアできるように頑張っているところです」
大宮は開幕から3試合連続でホームゲームを戦い、3連勝。EAST-Bグループで首位に立っている。3連勝となった福島戦では山本の3戦連発、松井匠の初アシスト、日髙元のJリーグデビューなど、新加入選手や新人選手の明るいニュースが多かった。
もちろん、それ以外の選手たちも負けていない。開幕2試合で出た課題を修正しながら大量6得点を奪った福島戦では、小島がすさまじい運動量を誇りながらゴールを奪い、和田拓也がさすがの試合運びを見せ、ガブリエウは昨年7月以来のメンバー入りを果たした。練習場には、黙々とトレーニングに励む石川俊輝や豊川雄太の姿もある。
3試合連続でキャプテンマークを巻いた杉本健勇は、「新しい選手や若い選手が結果を残しているのは、すごいことだと思う。俺も決めないと。若い選手からの刺激? いや、ないっすよ。俺が刺激を与えます」と、いかにも彼らしい男前な言い回しで、チーム状態の良さを表現している。
大宮の特別大会における滑り出しは、間違いなく上々だ。

粕川 哲男(かすかわ てつお)
1995年に週刊サッカーダイジェスト編集部でアルバイトを始め、2002年まで日本代表などを担当。2002年秋にフリーランスとなり、スポーツ中心のライター兼エディターをしつつ書籍の構成なども務める。2005年から大宮アルディージャのオフィシャルライター。

